辿り歌 全エンドコンプリート
というわけで、直樹です。
サークルgranatさんの作品「辿り歌」を半年以上かけてようやくクリアできました。
辿り歌公式
ここのサークル作品は、過去に「すり替えられた果実の破片」をプレイ&クリア済みなんですが、あれを上回る分岐の難易度でしたw
特に後半へのシナリオアンロック条件となるエンドが半年近く見れませんでしてねぇ。公式に泣きついてヒントもらいまくってもまだ駄目で。いよいよ来世に望みを託すかと思ってましたが、奇跡は起きました。
諦めなければ、いつか必ず夢は叶うんですよ?
さて、「すり替えられた果実の破片」同様、この辿り歌もいろいろ考察すべき謎があります。
私もプレイの思い出に浸りながら、気になる点をピックアップしていきましょう。
当然、例によってネタバレ全開です。未プレイだったりする方はご注意ください。
「辿り歌」は基本的に理維ちゃん、劫くん、ナユタの三人を軸に物語が進んでいく。あとは大吾さんとかマサユキとか智基(果実の破片で準主役を務めた彼だ!)も絡んでくるけど、ベースはこの三人だと思っている。
この物語は大ざっぱに言ってしまえば、主人公である中上理維ちゃんを巡る恋模様だ。
彼女に想いを伝える勇気がなかった劫くんが、一度死ぬことで自分に興味を持ってもらおうと画策する。なんという厨二思考だろうか。気になる女の子にちょっかいをかけちゃう男子かよと思ったが、よく考えたら彼らはまだ中学生。いわゆる天才少年と評され精神的にも早熟だった劫くんだが、逆に言えば早く形成されすぎたんだろう。他の子供たちがいろいろな経験を通じて学ぶべきことを、彼は知識で補ってしまった。百聞は一見にしかず。どれだけ専門書を読もうとも、たった一つのリアルな経験には及ばない。そのことに気づくには、彼はきっと聡明すぎたんだ。
そして理維ちゃん。すごく可愛くて魅力的な女の子。そりゃ惚れるわってレベル。しかし、相変わらず生い立ちの関係で少しズレてる。幽明心理ADV(公式はジャンルをこのように表現している)では、ズレた感性の持ち主が主人公になるのだろうか?所有している最新作「薄明のアジール」は前情報を意図的にシャットアウトしてるので、主人公がどんな子かまるでわからない。今から楽しみである。
そんな理維ちゃんに惚れた劫くんが、彼女の護衛とサポート、そして自らの目的達成のために作り出したのが、ナユタという天使である。一応は擬似人格ソフトウェアと表現しているが、その正体は天使の一柱であり春海先輩と対を為す天使である。(春海先輩とは、言わずもがなすり変えられた果実の破片に登場する天使すぎる怪異のことだ)
彼女(彼?)は初め、開発者である劫くんの意思に従って動いているように見える。プログラムなのだから、それは当然だろう。しかし、途中から徐々に自分の意思を持ち始め、ついには主である劫くんと敵対するまでになってしまう。
これは理維ちゃんを守るというプログラム本来の命令系統に、理維ちゃん自身の力が作用したことで、ナユタの意思に強く反映されたからではないだろうか。命令ではなく、ナユタ自身が理維ちゃんを守ろうとする意思の強さ。それは自らの主を消し去ってまで遂行しようとすることからも見て取れる。
だけどだ。ナユタへの命令には劫くんが目的を叶えるためのサポート的要素も加わっていたはずだ。その目的が、結果として理維ちゃんに害を加える可能性に行き着いた為ナユタは反旗を翻したわけだが。
これって実は、かなり辛いことなんじゃないか。ナユタは本来、プログラムに過ぎない存在だ。意思を持たないデジタルの集合体。それが奇跡的に意思を持ったことで、皮肉にも彼女自身の存在理由を否定することに繋がってしまった。
理維ちゃんを守る。劫くんの目的を果たす助けをする。これらが相反してしまった時、ナユタは強烈なまでの自己矛盾に陥ってしまった。理維ちゃんも「榛原くんの願いが、ナユタを苦しめるものでなければいい」と思うシーンがある。残念だが、この願いは叶わなかった。結果的にナユタは苦しめられる。元がプログラムだったゆえにだ。
主の命令に従うという原則。そこから派生した、理維ちゃんを守りたいという願い。エンディングによっては妥協点を見つけることもできるが、落としどころを見つけられず、破滅へ向かってしまうエンドも少なくない。
攻略中、ナユタの親密度を上げるためにはなるべく、劫くんの目的を叶えようとしている行動がいいだろうと思っていた。しかし、途中で上記の可能性に気づいてしまった時、私はあまりのやり切れなさに涙を流した。自らの存在理由を押し曲げ、理維ちゃんの傍に存在理由を見出そうとしたナユタ。ガラスのように脆く鋭い意思は、辛く悲しい。
作中で、ナユタはよくぴょこぴょこと動くシーンがある。なにかある度にぴょこぴょこするのは、彼女の愛らしいスキンも相まってかなり可愛らしい。理維ちゃんもデレデレしてるくらいだ。
でも、よく考えてみよう。愛玩動物のようにぴょこぴょこと動き回るナユタだが、彼女は決して馬鹿じゃない。むしろかなり聡明だ。
そんなナユタが、なぜぴょこぴょこと動くのか。私はその姿を、まるで道化師のようだと思った。
道化師は滑稽な動きで大衆に笑いを提供する。しかし、彼らの大げさで滑稽な動きは、見ている大衆たちの姿でもあるのだ。人間という本質を大げさなまでに見せることで、自分たちがいかに馬鹿げた存在であるかを見せているのに、大衆は道化師を笑い者にしただけで満足してしまう。その奥にある本質へ目を向けようとしない。
道化師のメイクを思い出して欲しい。彼らは常に笑顔だが、その頬には大きな涙のペイントがされているだろう?彼らは表面的に笑いながら、心の中で泣いているのだ。「可笑しいのは僕だけじゃない。見ている皆がそうなんだ。」そうした彼らの思いは、大衆には伝わらない。それでも道化師は笑わせ続ける。
ナユタもまた、ぴょこぴょこと跳ね続ける。壮絶なまでの自己矛盾をあの小さな体に抱え、劫くんや研究所のエゴとも言うべきものに翻弄されながら。自分の存在理由は理維ちゃんだ。そう信じて。
彼女はぴょこぴょこと跳ねる時、きっと心では泣いているのだ。彼女はプログラムだが、確かに心はある。心があってしまったからこその、悲劇だったとも言える。
ちなみに、私がもっとも気に入っているエンドは終点十七である。一見すると、劫くんと両想いになったハッピーエンドだが、ナユタはマサユキと共に向こう側の世界へ残っている。そのことは確かに悲しい。できれば三人で一緒に幸せになってもらいたい。でも、ナユタと永遠に別れてしまうわけではないのだ。
人の世で何十年かを二人で過ごし、終わりを迎えた後はナユタを迎えに行く。そこでやっと、三人(もう一人いるが)は一緒になれる。離れ離れになっている間、お互いにどんな経験や体験をしただろう。思い出話に華を咲かせるのもいい。三人が集まったらやりたかったことにチャレンジしてもいい。
人の世でも、ふとした時にナユタのことを思い出すかもしれない。元気でやっているだろうか?マサユキに意地悪されてないだろうか?そんなことを考えながら劫くんと優しい時間を過ごすのもいいだろう。完全に娘を心配するお母さんである。
いつの日か、ナユタが笑顔で「おかえり」と理維ちゃん、そして願うならば劫くんにも手を差し出す未来があって欲しい。そう強く思わずにはいられないエンドだった。
最後になるが、ここまで素晴らしい作品をプレイするきっかけを与えてくれたgranat様に深い感謝の気持ちを捧げる。
うん。考察のはずがナユタへの想いをぶちまけただけになったw
2015年05月27日
辿り歌を完全攻略できたのでいろいろ考察してみる(というかただの感想)
posted by 直樹 at 13:59| Comment(0)
| 同人ゲーム
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